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潮風【コビー】

第3章 ささやかな


「残念だったね。あの人、まだ若いのにね」

いつもそないやったらとコンビを組む中年の女性がため息をつきながら洩らした。

そないやったらもこくりと頷く。

(辛いなぁ)

病院に入院しても助かるわけは無いことを、頭では分かっている。それでもそないやったらは、こういう場面に出会う度に体が締め付けられ、辛い。

「さ、明日の仕込みをしないとね」

「はい」

そないやったらは食堂に隣接する菜園へ向った。

 プルプルプル プルプルプル

そないやったらの子電伝虫が鳴る。

「はい、もしもし」

「そないやったらちゃんか、お前さんに会いたいって人が来とるぞ」

受付の男性からだ。

「分かりました、受付へ行けばいいですか?」

「そうじゃ」

そないやったらはコンビの女性に連絡し、時間を貰った。

(どなたかな?)

受付へ走りながら考える。

「お待たせしました!」

「おお、あそこに立っとる人だよ」

受付の男性が指さした方向を見る。

ピンクの髪にバンダナを巻いた男性の後ろ姿があった。

「コビーさん?」

「あっ!あのあの、そないやったらさん!お、お久しぶりです!」

そないやったらに名前を呼ばれ、慌てたコビーはしどろもどろに挨拶をする。

「どうなさったんですか?」

「あの・・・会いたくて・・・」

コビーは真っ赤な顔でうつむきながら話す。

「おーい、若いの。悪いが別のところで話してくれんかの」

「すみません!」

受付の男性に言われて、二人は場所を変えた。

「コビーさん、菜園に行きませんか。静かですし、人もあまりいないので」

「あ、はい!お仕事中にすみません」

「いえ、コビーさんに会えて私も嬉しいです」

そないやったらも頬を染めながら話す。

「ほ、本当ですか?」

「はい。本当です」

コビーの顔は赤くなりながらも、ニヤついている。

「コビーさんこそ、お仕事はいいんですか?」

「ガープ中将にそないやったらさんに会いたいことを話したんです。そうしたら、つる中将のお口添えもあって、時間をいただけたんです」



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