第3章 ささやかな
「そないやったらちゃん、酒を用意してくれ」
「!・・・分かりました」
そないやったらは徳利と猪口を用意し、ドクターに指示された病室へと運ぶ。
この作業は何度体験しても慣れない。
病室に着き、付き添いの看護師に渡す。
ドクターが看護師から酒の入った猪口を受け取り、ほんの少し患者の口に含ませる。
「・・・」
患者の声にならない声が聞える。
ドクターが時計を確認し、看護師が時刻をカルテに書き込む。
「家族は間に合わなかったな」
ぽつんとドクターが呟く。
患者は穏やかな顔で、永遠の眠りについた。