第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
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食堂を出て、2人のぎゃんぎゃん声が響かないよう扉を閉める。
さぁ、大広間に戻ろうと一歩体を右に回転すると――
「うっわぁ!!?」
暗闇に浮かぶ3つの影。
「すっ、菅原さんシーッ!」
3つのうちの1つ、山口が口の前で人差し指をたてる。
菅原は慌てて自分の口を押えた。
薄暗い廊下。目をこらして見ると、影の主が1年組であることが分かった。
「お前ら…聞いてたな?」
ばつの悪そうな3人に菅原が察する。
「わっ、わざとじゃないんですよ!日向が荷物も持たずに風呂場飛び出してくから…
俺ら、追っかけて来ただけで!
食堂で立ち止まってた日向見つけて、つい一緒に聞いちゃったんですけど…」
両手の指を自分の胸の前で組み合わせながら、山口が必死に釈明した。
「すんません…」
「…」
影山と月島の表情にも反省の色が見える。
菅原はやれやれと腰に手を置く。
「聞いちゃったならもうしょうがないだろ…。
でもトラウマの話なわけだし、お前ら、このこと勝手に他の奴に話したりすんなよ?」
「!当然っス!」
「はい!言いません!」
「…はい」
影山、山口、月島それぞれの返事を聞いて菅原は「よしっ」と頷いた。
「んじゃ解散!明日は大事な試合だかんな、早く寝んぞー」
「「あス!!」」
菅原を先頭に大広間のある2階に上がる。
階段をのぼる面々、全員が日向と美月の関係に思いを馳せているなんて
お互い考えもしなかった。