第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
見ると、こちらに背を向けた日向は廊下に正座し、
自身の両頬を両手で覆っている。
廊下の窓から差す月明かりで見えた日向の頬は
相当な勢いで叩かれたことにより、赤みを帯びていた。
「山口、月島。俺、すっげー意地悪な奴かも」
日向のやけに凛とした声が廊下に響く。
「俺と美月ってちっさい頃からずっと一緒でさ、
美月、いつも遊びに行くときは俺の後ついてきたし、
あいつと一番仲良いのは俺!とか思ってたりしたんだ。
烏野のマネージャーになってくれたのも、
高校でもまた一緒にいれるって思ってすげー嬉しかった。
…けどさ、ここにいれば美月の力になってくれる奴なんていっぱいいて
そういうの目の当りにしたら俺、苦しくて…」
「それって独占欲?」
日向の言葉が遮られる。
山口が横を見ると、月島が無表情で日向を見下ろしていた。
「独占…。そうかも。そうだと思う…」
月島の言葉を反復すると、日向はもう一度
自身の頬を思い切り叩いた。