第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
日向は影山のことを
“負けたくない相手”として強く意識している。
同じチームの仲間になっても関係ない。
これまで二人は小さなことでも張り合ってきた。
そんな相手が自分の知らない所で練習してるなんて聞いたら
黙っているわけがないのだ。
(影山の奴…!俺に秘密で特訓なんてずりぃ!)
2段飛ばしで階段を駆け下りると、ふと食堂から漏れる光が視界に入った。
急ブレーキをかけて足を止め、もしや?とその光に近づく。
「ユニフォームが届いたの?!わぁ~明日見るの楽しみ!」
(あ…美月だ!)
中から聞こえてきたのは、楽しげな美月の声。
夕飯以来顔を合わせていなかった美月の声に、
日向はパッと表情を晴れさせる。
というのも、合宿所に戻ってきても美月に付きっきりだった日向は
「もう大丈夫だから!」と彼女から過保護禁止令を出されてしまっていたのだ。
(普段は美月の方が俺に構うくせに…)
そんな不満もあったが、おとなしく彼女に近づかないでいた日向。
しかし今、美月がすぐそこにいるんだと思ったら
声を掛けずにはいられない。
「美月っ」
満面の笑みで食堂に入ると、
そこには美月と一緒に向かいに座る影山の姿もあった。