第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
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美月は夢を見ていた。
それは過去の夢。
まだ小学校低学年の頃、通学路には大きく獰猛な犬を飼っている家があった。
その家の前を通るとき、
いつも目の前には自分と同じサイズの小さな背中があった。
『大丈夫だよ、美月は俺が守るから』
そう言って、小さい頃から私を守ってくれる。
「翔、ちゃ…ん」
美月は自分のうわ言とともに、ゆっくりと目を開いた。
目の前には白い天井。
起き上がろうとすると、後頭部に痛みが走った。
「美月…!?起きたっ!よかったー…っ!!!」
横に頭を傾けると、日向が目を赤くしながら手を握っていた。
「頭、痛い!?保健の先生が診てくれた感じでは大丈夫だって言うんだけど!」
自分がボールに当たってしまったことを思い出した美月は
日向を安心させるように口角を上げて微笑む。
「大丈夫だよ、翔ちゃん。記憶喪失にもなってない。それより練習は…?」
「今は昼休み!
練習にはちゃんと出ないと美月が責任感じるって、皆に言われたから…」
日向の様子から、練習には出ていてもきっと上の空だっただろうと察する。
お昼までには目を覚ますことができてよかった、と自分の回復力に感謝した。