第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
美月はマグカップに添えた自分の手を見つめる。
「翔ちゃんはバレーがしたくてたまらなかったのに、
まともに出来ない時間が長かったんだ。
それが烏野に来て、ようやく素敵なチームメイトに恵まれたんだって思えて」
少し照れて、頬を赤らめつつ、優しい瞳を影山に向けた。
「影山くんみたいな人が、翔ちゃんのチームメイトで、良かった」
とびきり緩んだ美月の微笑み。
影山は釘付けになった。
だんだんと、自分の顔が熱くなってきているのが分かる。
「あちぃっ!!!!」
椅子をがたつかせながら勢いよく立ち上がった影山に、
美月はびっくりして目を見開く。
「え…ミルク、そんなに熱かった?」
「うっ…、あぁ!あちーもんはあちぃ!」
(そんなアツアツにした覚えはないけど…
気温そんなに低くないのにホットにしたから、かな?)
影山の言う『あつい』がミルクでないことに美月が気づくことはなく、
不思議そうにカップを見つめる美月に影山はいたたまれなくなった。
「…っ、さっさと飲んで風呂行くぞ」
「え、お風呂?」
「1人じゃ怖いんだろ?!俺はお前の寝間着なんて一昨日も普通に見てるし、
田中さんたちみたいに下心なんて無ぇから…」
(まぁ…、一昨日は寝間着姿見てるような状況じゃなかったっつーのもあるけど…)
「えっ、ごめんなんて言った?」
最後の方の言葉は小さく、美月の耳では聞き取れなかった。
繰り返して言う気にもなれない影山は美月を睨む。
「とにかく!早く行くぞ!」
「ええ!?待って影山くんっ」
踵を返して廊下に出ていく影山。
美月は慌ててカップを流し台に置き、彼の背中を追いかけるのだった。