第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
「いいよ、ゆっくりで。
河北さんが俺らと仲良くなりたいって思ってくれてるなら、それで今は充分」
そういいながら、澤村は優しく美月の頭をなでた。
触れられ一瞬目を見開いたが、その心地よさに美月は頬を緩める。
ふふっという笑い声が美月から漏れた次の瞬間、
「澤村さんの手、きもちいです」
澤村の目に、ふわふわとした美月の柔らかな笑みが飛び込んできた。
「…っ」
美月を撫でていた手はぴたりとその動きを止める。
「…?澤村さん?」
静止した澤村を見て、美月は首を傾げる。
「そんな顔、見せるなよ…」
小さく呟かれた言葉は上手く聞き取れず、
美月は聞き直そうとするが
「…そろそろ練習始まるな」
そう遮られてしまった。
「あっ、待ってください!」
背を向けて皆の元へ戻ろうとする澤村に呼びかける。
「あの、澤村さんも私のことは下の名前で呼んでください…」
気まずそうに言う美月を見て澤村は心の中でため息をついた。
(人の心かき乱してる自覚なんて、ないんだろうなぁこいつ)
「分かったよ、じゃぁ宜しく、美月」
「!…はいっ!」
美月はその満面の笑みで
またも澤村の心を乱してしまうのであった。