第1章 烏野高校バレー部、始まる
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入学式から数日、教室で机に突っ伏す美月はどんよりとしたオーラをその背中に背負う。
「翔ちゃんのばか…なんのための電動自転車…」
せっかく買った電動自転車は今日もお役目なし。
バスでゆったりと登校できるのは楽だが気分は絶不調である。
「隣で陰鬱な空気出さないでくれる?うつりそう」
ガタガタ、と隣で着席した音がしたのと同時に、
吐き捨てるようなセリフをかけられた。
のっそり顔を上げると声の主はもう美月には興味をなくしたかのように
鞄から教科書を取り出しこちらを見向きもしない。
(え?この人が私に声かけたんだよね…?
たしか名前は…)
「えっと…月島くん?」
まだ日の浅いクラスだが、隣の席の人くらいは名前を覚えている。
月島はその端正な顔を、表情を変えずに美月に向けた。
「そうだけど」
「あ、ごめんなさい…そんなに陰鬱だった?」
(男子だし、話す機会なかったけど…
なんだろう、無表情でちょっと怖いかも)
「うん。あと独り言うるさいし」
「ひとりご…ぅえっ!声に出てた!?」
慌てて口元を手で覆う。
月島は呆れた顔をしてため息をもらした。
「出てたよ…気付いてなかったの?」
「うっ、うるさくてごめんなさい…」
「ツッキー!!」