第2章 たった1人でのゴールデンウィーク合宿
――『心配だから』
そう言いかけて、月島は言葉を飲み込んだ。
言葉にしたら自覚してしまう。
彼女の一生懸命な姿、真っ直ぐな目に惹かれていることを。
「…ッ。料理は得意なんじゃなかった?」
代わりに出る言葉はいつもの煽り文句。
けれどもその声にいつもの覇気はなかった。
「だって、人がそばにいるとなんか緊張しちゃって」
月島はまたため息をもらす。
ここで『月島くんがそばにいると』ではなく
『人がそばにいると』というのが
美月が月島を意識していない証拠のように思えた。
「じゃぁもう僕戻るから。ちゃんと手当して早く切り上げなよ」
ポカンとした美月を残し、月島はあの騒がしい大広間にまた戻って行くのだった。