第4章 インターハイ、秘密の応援策
「おっ、俺にもやってくれーー!!」
緊迫した空気を壊すように、田中の叫びが響いた。
「えっ田中さん!?」
「美月の喝、超気合入りそう!背中にっ!ほれっ」
「えええっ」
「龍ずりぃぞ!!俺もっ!俺にもやってくれ!!」
「にっ、西谷先輩までっ」
背中を向けて迫って来る2人が怖くて、視線で澤村に助けを求める。
「いやー…ありだな」
「澤村さん!!??」
まさかの賛同に美月は逃げ場を失った。
「あの旭にも気合が入ったみたいだし、美月の喝は効果ありそうだ」
他ならぬキャプテンの意見だ。
烏養も「いんじゃねーの」と一言で賛同。
結局全員の背中を勢い良く叩き、送り出すことになってしまった。
「…僕はいい」
「いや、月島君には日頃の鬱憤を晴らすためにもぜひ叩かれてもらう」
順番に背中を叩いていく中で、そそくさ免れようとしていた月島を捕まえる。
彼にはいつも教室や部活で嫌味を言われている恨みがあるのだ。
嫌がるのを聞かず、思い切り叩いてあげた。
「っ…!痛った。最初は『恐れ多い』とか嫌がってたくせに」
「もう開き直りました!」
ふんっと鼻を鳴らす。
美月と月島のやり取りを見ていた烏野部員は、月島の珍しい姿を見て思わず笑っていた。
これで全員に気合を注入し終えた。
「皆さん、改めていってらっしゃい!!!」
試合に向かう皆の背中は、いつもより眩しく感じた。