第4章 インターハイ、秘密の応援策
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二回戦に向かう皆を、アリーナ前の扉で見送る。
この後はまた観覧席とアリーナで離れ離れになるからだ。
「いってらっしゃい!」
「おー!!」
「いってきます!!」
手を振り、声を返してくれる。
そんな中試合に向かう一際大きな背中は、少し強張って見えた。
美月はその様子を見て、その大きな背中に向け、勇気を振り絞った。
「東峰さんっ」
「へっ?」
意外なところから名前を呼ばれて、東峰は間抜けな声を出してしまう。
美月はずんずんと彼の元へ近寄り、くるりと背中に回った。
「えっ?なっ」
「いってらっしゃい!!」
両手のひらをがばっと広げ、そのまま東峰の背中に叩きつける。
ばんっ
「う゛っ」
声を漏らした東峰は、何が何だか分からず美月の方を振り向く。
困惑した東峰に対し、美月はやり切った!という満ち足りた表情を浮かべていた。
「おおおっ…おいっ美月!先輩になんてことしてんだっ」
日向があわあわと声を上げる。
「何って…気合注入」
「はぁ!?」
悪びれない美月の代わりに日向が東峰に頭を下げる。
美月は東峰としっかり目を合わせた。
「東峰さんなら大丈夫です。鉄壁だって崩せます」
「!」
美月はじんじんと痺れる手のひらをギュッと握った。
「こんなに大きくて、頼れるエースがいるんですもん。信じてます」
肩が震えている。
この美月なりの激励は、相当勇気を出した行動だ。
東峰は美月の想いを感じ取り、拳に力を込めた。
「あぁ…任せろ」
そう微笑まれて、美月の緊張が解ける。
(よかった、いつもの東峰さんだ)