第4章 インターハイ、秘密の応援策
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昼ごはんを軽く食べると、二試合目まではまだ時間があった。
各自自由に休憩を取れと監督に言われ、美月は日向と影山の元へ。
大会会場の外にある広場で二人がトス練し、美月は芝生に座ってそれを眺める。
休憩時間なのだから休めばいいのにと少し思ったが、二人はボールに触っている方が落ち着くんだろうとすぐ考え直した。
「次、あの眉無しのいる鉄壁高校だな」
「伊達工業な」
「っわかってるし!!」
行き来するボールを影山が止める。
「…多分、伊達工に負けたっていう3月の試合が
東峰さんが部を離れた原因だ」
「旭さんが…」
二人の会話を聞き、美月は以前清水から聞いた話を思い出す。
東峰がある試合を原因としてエースの自信を無くし、部を離れていたこと。
西谷が東峰の態度に憤り、部活動停止処分を受けたこと。
(私は騒動が収まった頃に入部したから、二人にそんなことがあったなんてイメージしづらい。けど、二回戦は因縁の相手との試合になるんだ…)
「日向、影山!ちょっといいか」
やってきたのはひらひらと手を振る菅原。
(二人に話かな)
美月はその場を立ち去ろうとしたが、
「美月ちゃんも聞いてていいよ」
そう言われその場に留まった。
「よろしく頼む」
菅原は日向と影山に頭を下げた。
3年の先輩にそんなことをされ、二人は唖然とする。
「伊達工業は強敵だ。3か月前は、あの鉄壁のブロックにこてんぱんにやられた。
でも今は、最強の囮がいる」
菅原の目線は影山へ。
「日向の前の道を切り開いたみたいに、
旭の…エースの前の道も切り開いてくれ」
それは、本当であれば菅原自身が一番実現したいことのはずだ。
どんな気持ちで、二人に想いを託したんだろう。
美月はまっすぐな菅原を見て、きゅっと唇を結んだ。