第4章 インターハイ、秘密の応援策
両隣からの視線に美月の応援も止まった。
「な、なんですか…?」
「初戦から飛ばしてんなぁと」
岩泉が笑う。
「声枯れるぞ」
金田一は心配そうだ。
「でも、皆の方がもっと大変なはずだから。私は声出して応援しないと」
前を向く真剣な表情に、二人は何も言えなかった。
12対25。
1セット目は烏野が先取。
ホイッスルが鳴り、2セット目が始まる。
開始早々影山のノータッチエース。
重いサーブが何本も決まる。
それでも相手校の常波は必死に食らいついてきた。
25対14。
最後の1点は澤村が決めた。
ホイッスルの音が耳にこだまする。
第一試合が終わったのだ。
美月は足の力が抜け、床に座り込んでしまった。
「っぅおい!大丈夫か!」
岩泉が屈んで肩を揺する。
「岩ちゃん乱暴!美月ちゃん大丈夫!?」
いつの間にか飛んできた及川が美月の両肩を掴み、岩泉から取り上げた。
「おまっ」
「試合中は離れてたんだからもう良いでしょ!岩ちゃん彼女にくっつきすぎ!」
「はぁ!?」
「…勝った」
にらみ合う2人を気にも留めず、美月はコートを見つめ声を落とす。
「試合に勝った…次がある…」
試合に勝てば次があるのは当たり前のことだけど、
言葉にして噛みしめてしまう。
だってこんなにも嬉しいから。
「美月ちゃん?」
徐に立ち上がると手すりに身を乗り出した。
整列した烏野の面々と目が合う。