第4章 インターハイ、秘密の応援策
“この前の練習試合”と言われ、改めてジャージを見る。
白にさわやかなミントグリーンのラインが入ったジャージ。
見覚えがある。
皆が回し読みしてる雑誌に載ってた、練習試合をした相手。
その学校名を思い出した。
「青葉城西…!」
「うん」
にっこり微笑まれ、美月はまた下を向いた。
及川の王子様スマイルは美月には刺激が強い。
「及川さんてば、その子にばっかり構いすぎ!」
しびれを切らした女子たちが頬を膨らます。
「ごめんごめん。もちろん皆とも話した い゛ッ!!!」
及川の後頭部にバレーボールが直撃。
ボールの主は同じく青葉城西のジャージを着た黒髪短髪の男子。
眉間にしわを寄せ、怒りに満ちた顔をくいっと動かし及川を呼ぶ。
「…ごめーん、また今度ね」
「「「えぇ~!?」」」
及川は困ったように笑いながら、彼女たちに別れを告げた。
「烏野のマネちゃんはまたあとでね」
「!!」
存在をできる限り消そうとしていたのに声を掛けられ、及川のファンから冷たい視線を受ける。
美月は失礼にならない程度に及川たちへ頭を下げ、そそくさと会場からさらに離れていった。
「おい、今の烏野の…?」
「そーなんだよー!烏野に新しいマネちゃん入ったんだって!岩ちゃん知ってたー?」
「興味無ぇ」
岩ちゃんと呼ばれた男は「つまんないなぁ」とこぼす及川に一発蹴りを入れ、
このどうしようもない色男がまたはぐれることのないよう、会場内へ連行していった。