第4章 インターハイ、秘密の応援策
(わざわざ電話なんて、急ぎの用だよね?)
会場の外に出て、すぐに電話をかけ直す。
「あ、お母さ「「「きゃーーーーっ及川さーーーん!!」」」
黄色い歓声が耳をつんざき、美月はびっくりしてスマホを投げ飛ばしてしまった。
とっさに両手で耳を押さえたわけだが、それでも音の振動がビリビリきている。
「な、なにが起きたの…」
声のあがった方へ目を向けると、浮足立った様子の女の子たちが4・5人。
そして彼女たちに囲まれたジャージ姿の男子が1人、彼の足元には美月のスマホが。
「ん?これ君の?」
気づいた彼はスマホを拾い、美月の元へ持ってきてくれた。
「地面にぶつかって側面ちょっと削れちゃってるかな。壊れてない?大丈夫?」
受け取ったスマホは落ちた衝撃で確かに側面が削れている。
地面にぶつかった際終話ボタンが押されたのか、かけていたはずの電話は切れていたが、
無事に電源は入っている。
「大丈夫です、ありがとうございます」
それよりも何よりもこの状況だ。
「な、なにか?」
スマホを受け取って、もう彼とのやり取りは終わったはず。
しかし彼は離れない。
「そのジャージさぁ、君、烏野のマネージャーだよね?」
「はぁ」
「おかしーなぁ、烏野のマネちゃんてあの眼鏡の子だけじゃなかった??」
「最近入部したもので…」
「あっ、そうなの??1年生??」
(なんだろうこの人、離してくれない…)
見知らぬ男性から質問攻めに遭い、美月は俯く。
ジャージを着ているしこの人も大会へ出場する選手のはずだが、試合はまだなのだろうか。
「この前の練習試合じゃいなかったのにー。
こんな可愛いマネちゃんいたなら早く会いたかったな」