第4章 インターハイ、秘密の応援策
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インハイ県代表決定戦、初戦当日。
会場には、この日のために練習を重ねてきた県内の選手が集う。
緊張と興奮が入り混じったような空気。
そんな会場で入り口にあるトーナメント表を前に、選手たちが思うことは様々である。
「Aブロック入んなくてよかったぁ」
「えーと、あそこのブロックは…トリ…、トリノ?」
「カラスノじゃね?ちょっと前まで強かったとこじゃん?」
現在、トーナメント表を前にチーム談議で盛り上がるこの二人も、
今大会に出場する選手。
「あぁ~。ちょっと前まではね。今はなんか、ダッサイ異名がついてんだよ。
確か…、“落ちた強豪、飛べない烏”」
持っていた情報を自慢げに話す彼の元へ、
カラスの集団が迫りくる。
「おいっ、ちょ、やばいって…」
話していた内の一人が気づいたが、既に遅かった。
自分たちへの陰口に耳聡い田中が、背後から彼らに詰め寄る。
「飛べないぃ??んん??なんですって??」
威圧感たっぷりで登場した田中に、噂話をしていた二人は「ヒイッ」と肩を震わせた。
殺される!という恐怖に襲われた二人だったが、田中の後ろから大きな手が伸びてきて、その脅威は取り去られる。
「すみません」
田中の首根っこを掴んだ澤村は2人に礼儀正しく頭を下げた。
「すぐ絡まない」
「はい…」
田中を窘めつつ、烏野バレー部は会場の奥へと進む。
黒いジャージの集団は目立ち、彼らを見て周囲はざわざわとしていた。