第4章 インターハイ、秘密の応援策
ガラガラと後ろで扉が開き、それとともに賑やかな生徒の声が増す。
長いホームルームから解放された生徒たちは喜びと疲れが入り混じった表情だ。
「あっ、清水先輩っ」
美月の弾んだ声に顔を上げると、
教室から出てきたバレー部マネージャー、清水の姿があった。
3人に気付いた清水が小走りで駆け寄る。
「なんで美月ちゃんが3年の廊下に?職員室の前で待ち合わせじゃ…」
「えっと・・・待ちきれなくて迎えに来ちゃいました!」
「えぇ!?待たせてごめんね、3年生ばっかりで怖かったよね」
眉尻を下げる清水に美月はぶんぶんと頭を振る。
「私が勝手に来たんで謝らないでください!それに、すぐ澤村さんと道宮先輩に会えたので大丈夫です」
美月は澤村と道宮に向き直ると「お話に混ぜて頂きありがとうございました!」と、
笑顔で頭を下げ、その場を後にした。
職員室へ向かった二人を見送り、ちらりと横を覗く。
(澤村。その横顔は、完全に恋をしている顔だよ)
「かわいくて良い子だね」
「あぁ…って、あ!?」
おもわず答えてしまったようで、顔を真っ赤にした。
長く一緒にいるのにそんな表情を見たのは初めてで、心に穴が空きそうだ。
「さっ、私も部活いこーっと」
「なっ、道宮!?い、今のはな!深い意味じゃなく反射でっ」
なるべく普段通りの自分でいられるうちにこの場から逃げなければ。
澤村は恋愛面には疎いけど、人の心の傷にはすぐ気づく。
照れながらする分かり切った言い訳も聞きたくない。
澤村にも早く部活に行くよう言ってなんとか一人になれた道宮は
廊下でゆっくり深呼吸する。
思い出すのは美月と澤村のこと。
(どうしてだろ。勝ち目はないって思っても、諦め切れないなぁ…)
「あ、インターハイ頑張ってって、言いそびれちゃった…」
道宮はもう一度深呼吸して部活へと向かった。