第4章 インターハイ、秘密の応援策
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「澤村さんっ!」
目の前の話し相手の名を、廊下の端から呼ぶ声が聞こえた。
可愛らしい女の子の声。
呼びかけに気付いた相手は驚きの声を上げる。
「なっ、美月!?」
自分に向けられた背中を見て、私――道宮結は動揺した。
(澤村が、女の子を下の名前で呼んでる…?)
澤村は道宮の動揺も知らず、彼女に背を向けたまま美月と話し始めてしまった。
「どうしたんだ?3年のクラスに来るなんて珍しいな」
「清水先輩と部活に行こうと思って、迎えに来たんです」
「あぁなんだ清水か。清水のクラスならまだHR中だぞ」
「えっ!長いですね…」
「ん。なんか揉めてるみたいだな」
「澤村、その子誰?」
思い切って二人の会話に入ってみる。
澤村の後ろからひょこっと顔を出すと、
ようやくその子の顔がしっかり見れた。
整った顔に女の子らしい佇まい。
こんな可愛らしい子と澤村が知り合い?
一方、澤村の話し相手は道宮を見てサッと顔を青くした。
「あぁ道宮、この子は…」
「すっ、すみませんっ!1年の河北美月です!男子バレー部でマネージャーをさせてもらってるんですが…お話し中だったんですよね?!気づかず失礼しましたっ」
恐縮したように頭を下げられた。
道宮は呆気にとられる。
(れっ、礼儀正しい…
ていうか…あれ?わたし怒ってるって思われた?)
道宮はへらっと笑ってみせた。