第4章 インターハイ、秘密の応援策
「あんま走ると転ぶぞー。そんな急いでどうしたんだよ?」
「西谷先輩、えっと・・・これは…」
美月のところまで登ってきた西谷はじっとこちらを見つめてきた。
咄嗟のことに視線を外し、答える。
「清水先輩と一緒に部活に行こうと思って…」
きょとんとしていた西谷が、パッと表情を晴れさせた。
「そっかそっか!潔子さんのお迎えかー!」
そりゃ急がなくちゃなぁ!と満面の笑み。
清水の名前を聞くだけで上機嫌になってしまう西谷につられ、美月も笑顔になる。
「はい。西谷先輩はもうホームルーム終わったんですか?」
「おう!んで旭さん迎えに行こうとしてたとこ!おそろいだな!」
お迎え仲間であることをおそろい、と表現されてなんだかくすぐったい。
「えへへ、かわいい言い方ですね」
恥ずかしくなって髪をいじると、その手を西谷が掴んだ。
突然のことにびっくりする。
「へ?」
「これ、どうした?」
西谷が見つめるのは掴んだ美月の指先。
(あ…今朝怪我したとこ)
早朝、眠気眼で繕いものをしていた結果の失態。
そのまま素直に言おうとして、ぎりぎり口をつぐんだ。
そのまま言っては秘密をばらしてしまう。
「っ、今朝お弁当作ってて、包丁で手が滑っちゃったんです。ちっちゃい怪我なんで全然痛くないですよ」
ひらひらと手を振って見せると、西谷は眉を下げた。
「全然痛くないっつっても、ケガはケガだろ。お前ボールにぶつかったり結構危なっかしいからなぁ。気を付けろよ」
「う…。お弁当1つまともに作れずお恥ずかしい限りです…」
肩を落とした美月を見て、西谷は目をぱちくり。