第1章 烏野高校バレー部、始まる
「あっ、あの影山くん!」
試合で見たあのトスに感動したこと、日向とチームになってくれて、
日向の動きを活かしてくれたのがうれしかったこと。
彼に対し様々な思いを抱いていた美月は、反射的に彼を呼び止めていた。
振り返った影山は頭にハテナマークを浮かべて美月を見つめ返す。
「あの…っ、今日の練習見学しに行こうと思ってる!」
「…おぅ」
宣言してくる美月に相変わらず疑問符な影山。
しかし美月は影山を目の前にし、いっぱいいっぱいだった。
もともと体格の良い男性に対して特に人見知りを発動してしまうところがあるのに加え、試合で目を奪われた相手。
憧れの芸能人に会ったような緊張状態だ。
(何から話せばいいのかな…!
と、とりあえず喋らなきゃ!変な子って思われる!)
「こっ、こないだの試合、日向と影山くんの速攻見た」
「おう」
「あのスパイク見たとき私、なんていうかもう感動して、
すっごいかっこよくて…!もっと見たいって思ったの!」
「お、おう」
「だ、だから今日の見学、よろしくねっ」
(ま、ずい…思いが募りすぎてあんま上手いこと言えなかった…!)
みるみるうちに顔が赤くなっていく。
そんな美月を見て影山は最初こそ戸惑っていたが、
「…お前、バレー好きなのか」
真剣な顔で問いかけてくる。
「う、うん。翔ちゃんの練習付き合ってたから、勉強したし…」
「…翔ちゃん?」
「っ!!ひ、日向の事!!」
影山の真剣な問いに冷静さを取り戻したつもりだったが、
少し気が抜けていたようである。
しまった!と慌てる美月だが、一方の影山はあまり気に留めていないようだった。
「今日も…日向とは速攻の練習する」
「う、うん」
「だから、見ていけばいいと思う」
「あ…ありがとう」
そう言うと影山は「じゃ」とまた素っ気なくその場を立ち去ったのだった。