第4章 インターハイ、秘密の応援策
「おいこら」
巡らせていた思考が断ち切られた。
「あ」
「“あ”、じゃねーよ。教室戻るぞ、昼終わる」
すたすたと歩き始めた彼を慌てて追いかける。
目の前の背中は大きくて、男の人というのを表しているようだった。
(影山君はどっちかな。恋とか、したことあるのかな)
気付くと美月は彼のシャツに手を伸ばしていて、
「ぅわっぶね!いきなり掴」
「影山君って、好きな人いる・・・?」
そんな突拍子もない発言をしていた。
「…は?・・・・・はぁあ!?」
真っ赤に染まった頬は怒ってるのか照れてるのか分からない。
美月もまさかこんな大きく反応されるとは思っておらず困惑。
「や、単なる興味で!どうなのかなーって」
「はぁ!?いるわけねーだろボゲェッ!!」
「え、そうなの?」
「しらねーよ好きとか嫌いとか!俺はそんなんよりバレーがしてぇ!」
「な、なるほど」
ふんっと鼻を鳴らして美月の手を振りほどくと、
「先行く!」とずんずん廊下を去って行った影山。
取り残された美月はしばらく呆然とし、先ほどの影山を思い出して1人吹き出した。
(「そんなのよりバレーがしたい」って、すっごく影山君らしい理由だなぁ)
余計な飾りの無い、単純で明快な影山の言葉。
さっきまで抱いていた焦りや不安が消し飛ばされるようだった。
教室に戻るまでの道。
1人でにこにこ歩いていた美月が
すれ違った生徒から気味悪がられたのは
言うまでも無い。