第4章 インターハイ、秘密の応援策
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休憩時間になると、ボールに空気を入れていた美月の元に
澤村がやって来た。
「美月、大丈夫か?」
眉を下げ心配してくる澤村。
しかし美月には何のことを言われているのか分からない。
「え、と?」
困惑した表情を見せる美月にハッとする。
「…あぁ!悪い、さっきのことだよ。お前部室から出てきたとき様子おかしかったろ?
日向達に事情聞いたら部室で2時間以上眠ってたんじゃないかって話だし…。
具合でも悪いのかって思ってさ」
あくまで心配した様子の澤村だが、
美月にとっては恥ずかしい失態を知られたという衝撃が大きく―…
(さ、澤村さんにまで寝てたのバレた…!)
傍から見ても分かるくらいに頬を赤く染めた。
「すっ、すみませんでした!
部室で居眠りなんて、本来なら私も田中さんのように反省をすべきなのに…っ」
そう頭を下げる美月。
澤村は「反省ねぇ…」、と後ろで絶賛反省中の田中を見やった。
「あれは明確に鍵かけ忘れたっつー落ち度があるから走らせてるだけだよ。
でもお前は違うだろ?授業サボるなんてらしくないし」
何周も体育館を走らされフラフラになっている田中から視線を戻す。
「なぁ、なんかあったのか?」と優しく頭をなでられれば、美月の体は硬直する。
(どうしよう…何か喋らなきゃなのに、声が出ない!)
「おい、どうした?」
不審がられているのは分かっている。
しかし触れられたことで先ほど急接近してしまった事態のことを思い出した美月はすっかり意識してしまって体の自由を失っていた。
これはあなたのせいです、なんて言えるわけも無く俯いていると、
「まーたやってるよ。大地の天然タラシ」