第4章 インターハイ、秘密の応援策
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体育館裏の水飲み場で、
美月は蛇口をひねりその顔面にこれでもかと水を浴びる。
頭の中では先ほどの出来事を延々リピートしていた。
(勝手に部室入って勝手に寝てるとかバカなの私!?恥ずかしいいい
しかも澤村さんにも寄っかかって迷惑かけるし!ひいいいっ)
冷たい水をどんなに浴びても、顔の赤みは引いていかない。
蛇口をひねり、更に水の勢いを強くする。
「君さ、溺れる気?」
美月の手ごと蛇口を掴み、きゅっとひねって水を弱める。
勢いの弱まった水は顔に当たらなくなってしまった。
「月島…くん」
ぼたぼたと顔や、顔周りの髪から滴を垂らしつつ
蛇口を締めた犯人を見上げる。
「…っ。その顔、どうにかしたら?」
水も滴る…とはよく言うもので、美月の濡れた髪と表情は
やけに大人っぽく見えた。
月島は目をそらしてしまう。
「あっ、あのね月島君!さっきはごめんっ」
持っていたハンカチで顔をある程度拭くと、
美月はガバッと月島に頭を下げた。
「…は?」
「美術の授業の前…私、急におっきな声上げて飛び出しちゃったでしょ?
びっくりさせたよね…ごめん」
「…いや、待って。なんでそれを君が謝るの?」
「え?だって私がヒステリックみたいな対応しちゃったんだし…」
「っだから!その原因は僕でしょ?」
自分が謝るつもりでここに来た。
なのに、どうしてこの子は自分が悪いと思ってるんだ?
「はぁ…あのさ、僕が謝ろうとしてるんだから素直に受け入れてくれない?」
呆れた声で月島が言うと、美月は目を丸くした。
「つ、月島君が…謝る…!?」
(嫌味なく本当に驚いてるのが逆にむかつく…)
「そうだよ。あの時僕に近づかれたのが相当嫌だったんでしょ。悪かったよ」
「え…。あ、それはちが」
「…さっきキャプテンと接近した時は顔真っ赤にしたくせに」