第4章 インターハイ、秘密の応援策
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(まだ全然治ってないや、トラウマ…)
教室を出てから、すぐに美月は後悔した。
月島からすればいつもの冗談だったに違いない。
それなのにあの日のことを思い出してついきつく当たってしまった。
(びっくりしてたなぁ月島君…。
マネージャーになってから結構男の人平気になったと思ってたのに)
授業に出るのも気まずいし、体調が悪いわけではないから保健室も行きづらい。
そこで美月は部室棟に来ていた。
賭けでドアノブをひねってみると、驚くことに開いていた。
(澤村さんが鍵かけ忘れなんて考えにくいし…誰か鍵当番代わったのかな…全く)
そうは思いつつも開いていたことに感謝しお邪魔する。
マネージャーになって数週間。
部室に入るのは初めてだった。
まず目についたのは目の前の壁に貼られた女性アイドルのポスター。
男子運動部の部室らしいといえばらしいのだろうか。
そして部屋についた湿布の匂い。
フローラルな女子更衣室で普段ジャージに着替えている美月には新鮮だった。
靴を脱いで畳にあがる。
ちょこんと座り込むと、部屋の狭さやきれいすぎないこの空間が
案外心地良いかもしれないと思えた。
お昼後のこの時間、ただでさえ眠いのが
今日は特に天気が良い。
窓から差し込む暖かな陽は彼女の瞼に重しを付けた。