第4章 インターハイ、秘密の応援策
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5限目は美術。移動教室だ。
「ん!?待って教科書忘れた!」
どうやら絵具セットを持って満足してしまったらしい。
「一緒に戻ろかー?」
「いい!先行ってて~」
友人に手を振り教室へと戻る。
まだ予鈴も鳴ってないし、遅刻はしないだろう。
美月が1年4組の教室に入ると、そこには予想外の光景があった。
「!月島君…!」
月島は自分の机に寄りかかり、手持ち無沙汰そうに薄い教科書をパラパラとめくっていた。
もう移動の授業が始まるのに一人で。
「はぁ…おっそ」
「何して…あ!」
差し出された教科書は美術のもので、
しかも氏名欄に記載された名前は河北美月。
「机に置きっぱだったの見たから、すれ違いにならないよう待ってた」
「あっ、ありがとう…」
彼の意外な優しさに感謝するが、ん?と引っかかって首をひねる。
「そのまま机の上に置いといてくれれば、気付いた時に取りに来たのに…」
月島がわざわざ教科書と一緒に待ってる必要なんて無い。
そう思って言うと、月島は預けていた体を机から離した。