第3章 カラスとネコと
慌てて蛇口を閉め、清水に向き直る。
相変わらず清水はくすくす笑っていて、美月はからかわれたんだと思い赤面した。
「しっ、清水先輩笑いすぎです!」
「ふふっ。ごめんね、反応が可愛くてつい…ふふ」
部活中、笑っている清水は滅多に見れない。
自分の前では見せるその笑顔が嬉しくて、
美月は上手く怒れずふにゃんとした困り顔になってしまう。
「も、もう!最近、私をからかう人がどんどん増えてるような気がします!
さっきも日向と恋人なのかーとか言われたり、オカンとか言われたり…」
「…『オカン』?」
「はい、ひどいですよね!まだ高校1年生なのに人をオカン呼ばわりですよ」
ボトルの水気を切り、タオルで拭く。
怒りを込めて拭いていると、清水はうーんと唸った。
「それは…面倒見が良いってことで、マネージャーとしてすごく大切な素質かも」
予想外の言葉にまた固まる。
清水は固まった美月の手からボトルを受け取りバッグに詰めた。
「美月ちゃんみたいな子がマネージャーになってくれて、嬉しい」
にっこりほほ笑んだ清水の顔がぼやけていく。
「しみずせんぱい…好き!」
抱き付いた美月の頭を、清水はよしよしと優しく撫でてくれた。