第3章 カラスとネコと
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ボトル騒ぎの解決で、部員はそれぞれの持ち場に戻っていく。
(あ…どうしよう!音駒の人たちに何もお礼言ってないのに)
美月は散らばった彼らを慌てて目で追ったが、
既にそれぞれ片付けを再開していた。
黒尾にはからかわれた恨みを込めながらも一言、
ボトル探しに協力してくれた礼を言えたが、
他の部員には失礼な態度を取ってしまったかもしれない。
(後でちゃんとお礼言いに行こう…)
くるりと振り返ると、日向は同じ一年の犬岡と試合の感想を言い合っていた。
飛び跳ねる二人を見て思わず笑みが零れる。
(翔ちゃんはすごいなぁ。初めて会った人ともすぐ仲良くなっちゃうんだもん)
すると、視線に気づいた日向がこっちに手を振ってきた。
「美月!美月もこいつのズバーッての、すごかったと思わねー!?」
これまた体を大きく動かしながら『犬岡のズバーッ』という動きを表現する。
日向の意味不明な擬音表現も幼馴染の美月にとっては慣れたものだ。
「!うんっ、ずばーっしゅばーってすごかった!」
「烏野のマネージャーさん…!犬岡走です!今日はあざっした!」
二人の元へ近づくと、犬岡の背の高さにやはり少し緊張する。
しかし、人懐っこい彼の笑顔はその緊張を和らげてくれた。
「こちらこそ…河北美月です。日向との競い合い、
見ていてドキドキした!ありがとうっ」
「…っ。かわいー…」
興奮した様子の美月を見てボソッと漏らす。
犬岡の小さな声は届かず、美月は小首を傾げた。
その時ふと金髪頭が美月の視界に入る。