第3章 カラスとネコと
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モップをかけたりネットを束ねたり。
部員たちが片づけている横をキョロキョロと歩き回る。
(全部回収したと思ってたんだけど、どこかに置いてっちゃったのかなぁ)
「どうしたの?探し物?」
うろつく美月を見かねて菅原が声を掛けてくれた。
「実はボトルが一つ見つからなくって…」
そう言うと、菅原はそうなんだと口に手を当てて、
「注目ー!!うちのボトルが一個見つからなくて困ってるみたいなんだけど、
誰か見てないー??!」
隣にいた美月がギョッとするボリュームで呼びかけをしてくれた。
「すっ、菅原さんっ!何もそこまで大事にしなくても…!」
「でもこの方が早くない?それに、皆美月ちゃんが困ってる顔してるの見て
そわそわしてたし」
(え?)
聞き返す暇もなく、2人の周りにぞろぞろと部員が集まってきた。
「ボトルってあの黄色のやつだよなー?」
「こっちじゃ見てないけど、どこらへんに置いてたんだ?」
音駒のメンバーは美月が体格の良い男性を苦手としていることを知らない。
親切心であることは充分分かっているのだが、
あっという間に囲まれて、美月はめまいを起こしそうな気分になった。
だからこそ、
「ボトルー?それってこれー?」
人の壁の隙間からひょこっと顔を出した日向。
美月は彼に思わず飛びついてしまった。