第3章 カラスとネコと
「…潔子さん。髪を下ろしている方は清水潔子さんだ」
「っなんと!名が体を表している!」
「そうだろう、そうだろう!
そして髪を結んでいる方は美月だ。河北美月!」
「おぉ!か、彼女はその…良い匂いがした…」
「!?いつの間に美月に近寄った!?」
「いいいいいいやっ!近寄ったわけじゃない!横を通り過ぎた際にこう、ふわっと…」
「その話…詳しく聞かせてくれ!」
「へっくしゅん!」
「くしゅんっ」
洗い場で同時にくしゃみをした美月と清水は顔を見合わせる。
「…誰かに噂されてるんですかね?」
「さぁ…」
田中と山本が自分たちのことで密談を交わしているなんて露知らず、
2人は洗い物を進める。
「あれ?ボトル一個足りない…?」
「え?123…、わっ!ほんとですねっ、捜してきます!」
美月は持っていたボトルの水気をパパッと切ると、
「すぐ戻りまーす」と洗い場を出て行った。