第3章 カラスとネコと
研磨の肩から半分顔を出して問う、警戒心むき出しな美月。
(わー、研磨の時と全然態度違ぇ)
その様子に、黒尾は興味津々だった。
それもそのはず。彼にとってこの光景は珍しいのだ。
普段であれば自分が人に囲まれ、
人と距離を置きがちな研磨を気にかける、というパターンが多い。
しかし今はその真逆だ。
(こうやって避けられると、逆に構いたくなるのってなんでだろうなー?)
黒尾はそんないたずら心を秘めつつ、
それはもう完璧な笑顔を美月に向けた。
「…あぁ、うちは女子マネいないんだ。だから…」
一歩、黒尾が近づいてくる。
その意図が分からず動けないでいると、
「お前が俺らのマネージャーになってくれたらいいんだけど」
そう“耳元で”囁かれていた。
美月、フリーズ。