Fall in love with you【R18】
第9章 nine
「よろしくね?藍原さん。」
差し出された掌をそっと握ると、少し冷たい。
「藍原さんの手温かいのね。眠いのかしら?」
「子供じゃないです。」
「そう?見た感じ高校生っぽいけど、幾つなのかしら?」
ニヤニヤした笑みが私の神経を逆撫でする。
「ハル、あんま藍原のこと苛めんな。」
「あら、虐めてないわよ。ちょっと質問しただけでしょ?」
ね?と私に賛同を求める様子は楽しげで、『揶揄っている』ことが伺える。
すごく、腹が立つ。
大人の余裕を見せつけてくるハルさんにも、こんな風にしか相手にされない子供の私自身にも。
「烏養さん、そろそろお店出ないと次の予定押しちゃいますよ。」
「次の予定?んなのあった」
「いいから、もう行きましょ!今日は私の我侭聞いてくれるですよね?」
なんて、この場から逃げるための言い訳でしかないのに。
「ふふ、随分と余裕ないのね?」
「好きになったときから余裕なんてないです。」
それでは、と席を立つと通路側をハルさんに座られた烏養さんが「邪魔、どけ」「いーや。」なんて言い合いを始める。その間に伝票を引っ掴んで勝手にお会計を済ませた。
握りしめた拳が、痛い、と小さく悲鳴を上げた。