Fall in love with you【R18】
第9章 nine
分厚いガラスの向こうでふよふよと自由気ままに泳ぐ魚。と、それを見てころころと表情を変える俺の彼女。
「烏養さん、烏養さん!あの魚すごくかわいいです!」
指さす方向を見ると岩にしがみついて微動だにしないコケのような魚。
「かわいいかぁ?お前の店に来る飲んべえのおっちゃんみてぇな顔してんぞ。」
「そんな顔してませんー!」
おかしな例えをしながらあーでもない、こーでもないと魚たちを見ていく。
「あ、クマノミ」
「あれだろ、シドニーまで連れてかれたヤツ」
「そうですけど…覚え方としてはどうかと思います。」
「そうかぁ?お、あっちの水槽のイカ美味そうだな。」
「雰囲気ぶち壊すんでヤメテ下さい。」
「刺身…揚げ物でもいいよな…」
「もう!烏養さん!!」
傍から見たらだいぶおかしなことを言ってる二人だったと思う。
「あ、この魚オイカワって言うらしいですよ!」
「何処ぞの大王サマみてーな名前だな。」
不意に空腹感を感じてケータイを見ると、時刻は既にお昼を余裕で過ぎてしまっていた。
「なぁ、腹減らねぇ?飯にしようぜ。」