第9章 nine

いつもの部活に行くみてぇなカッコじゃなくて、まぁ、それなりにちゃんとした服を着た。


つっても黒のVネックにジーンズだからいつもとそんなに変わんねぇけど。

普段はバレーあっから外してるピアスも今日は着けて、俺なりの精一杯のデート仕様。


ボディバッグに財布とケータイを突っ込んで部屋を出て店に居るおふくろに声をかけた。


「おふくろ。じゃあ出掛けてくるわ」


「おめかししちゃって、もしかしてデート？」


「……そーだけど。」


おふくろには彼女が出来たって言ってなかった。
何しろ相手は高校生で、世間一般的には認められない関係。


休みくれた手前、隠すのはどうかと思ったから一応言ったけど。


「良かったわぁ！あんたハルちゃんと別れてから誰とも付き合おうとしなかったし、最近はバレーと仕事ばっかりだったから、心配してたのよねぇ。」


バレーと仕事ばっかってワケでもねぇけどな…

藍原とヤることヤってるし


「ハルはもうカンケーねぇだろ。俺もう行くわ。」


おふくろは偉くハルのこと気に入ってたから、今でも何かと名前を出してくるんだけど、正直、良い気はしない。


車に乗ってタバコに火を付けても、
イマイチ気が晴れない。


これからデートだってのにすげぇモヤモヤする。


「あーくそ、早く会いてぇ…」