Fall in love with you【R18】
第9章 nine
ー烏養ー
ギチギチと、胸を締め付けられる様な感覚がした。
ただでさえ不安なことだらけだろうに、俺のことまで気を遣わせてどうすんだよ…
アイツの事を話したくないと拒む心が、彼女の不安を取り除いてやれない自分が、腹立たしくて仕方ない。
ぶつけようの無い怒りをどうしていいか分からず、キツく拳を握りしめた。
「そんな事より今度のデート、集合時間とかどうしますか?」
「集合時間て…部活じゃねぇんだぞ?」
遠足前の子供のように楽しそうな笑顔を浮かべられたら、毒気なんてすっかり抜け落ちて俺まで笑ってしまう。
「そうか…じゃあなんて言えば…?」
頭にハテナが浮かんでいる姿はなんとなく新鮮な気がして嬉しくなった。
「待ち合わせ時間とかでいいんじゃねぇの?」
「んむぅ…」
なんだよ納得いかないみたいな声出しやがって。
「もっと特別感出る言葉無いんですかね。」
「特別感て……まぁいい。とりあえずそうだな…本当なら家まで迎えに行ってやりてぇけど、変に噂になっても困るしな。一つ先の駅まで来れるか?」
「…大丈夫ですよ。10時頃の電車でいいですか?」
「あぁ。」
馬鹿な俺は、藍原が落ち込んでいることに全く気づいていなかった。