Fall in love with you【R18】
第9章 nine
シン、と辺りが静かになってボールが跳ねる音だけが響いた。
全員が状況を理解した時には既に影山と日向が2人に謝り倒していて、「怪我は無かったんだから」と宥めていた。
腹っていうか、胸のあたりがすげーもやもやする…
「東峰も、ありがとう。」
「藍原こそ、怪我なくてよかった。」
改めて名前を呼んだ時にはもう戻っていて、俺の気のせいかと思ったけど、やっぱりもやもやは無くならなくて。
疑いたくない。
だから、あの話をちゃんとしようと思った。
太陽が沈み気温が下がり始めた頃、練習は終わりの時間を迎えた。
「藍原、行くべ。」
「はい!」
止めていた車の鍵を開けると、藍原は今ではもう当然のように助席に乗り込む。嬉しい変化だ。運転するのを見てくるのは変らないけれど。
「運転しづれぇ。」
「やです。見てたい。」
「ったく…」
タバコを1本吸おうと取り出して、やめる。
「吸わないんですか?」
「お前の制服に匂い付いたら色々と厄介だろ。」
関係を隠したい、とかではなく、藍原が喫煙していると思われるのは本人にとっても俺にとっても良くないことだから。