第2章 if~貴方に忠誠を~
新撰組の『客人』であり千鶴の親しい知人という形で屯所で過ごす事になった悠真は忠誠を誓った供として千鶴を甲斐甲斐しく世話をする。千鶴が戸惑い恐縮してしまうくらい。朝、千鶴を起こしに部屋の前に訪れ千鶴の仕事を手伝い一緒にこなしていく。
はじめこそ、千鶴は断っていたけれど悠真の言葉に上手く丸め込れ今はほとんどの仕事を一緒にしており常に千鶴の傍にいる。
しかし、ずっと一緒では千鶴が窮屈に感じてしまうだろうと悠真は配慮し合間合間、千鶴から離れて別の事をしていたりして過ごすこと・・・・・・
────数日。
「おや・・・もういいんですか?」
「はい、お腹いっぱいで・・・・・・」
食べていた手を止めて箸を置いた千鶴の膳を見て悠真は小さく溜息を漏らした。悠真がここに来て、真っ先に気づいた事それは、千鶴の食の細さだ。いや、食が細いというより食欲がないのか食べないと言った方がいいかもしれない。新撰組幹部たちも気づいているのか千鶴の膳を見ている。悠真がここに来る前からこの状態なのだろう。顔色は悪いし、痩せたようにも見える。
「・・・・・・どうしたものか。」
体調不良から来る訳ではないだろう。だとするなら・・・精神的負担から。これがしっくりくる・・・というか間違いないだろう。
どのような状況でかは知らないが新撰組に拘束され、いつ処分されるか分からない危うい立場の身。そんな集団の中、囲まれて暮らしているのだから精神的疲労はかなりあるだろう。それに加えて、父親の情報が全く入らない。千鶴の精神を不安定にする要素は揃いにそろっている。
前のように華が開いたような笑顔が全く見られなくなった。引きつったような、怯えた笑顔。自分の殻に閉じこもりつつある千鶴に何とかしなければと悠真は考える。
広間を出ていく千鶴の小さくなった背中を見つめた。