第2章 if~貴方に忠誠を~
「そうです。勝手に出歩いては駄目と言う、しかし私は千鶴ちゃんとお茶を飲みたい。それなら斉藤さんがお茶を入れてくれる事で解決します。」
千鶴という言葉にピクリと斎藤が反応する。悠真はそれを見逃さず目を細めた。
「千鶴ちゃんとお団子を食べようと思いまして。そうなるとお茶が必要でしょう。」
「・・・・・・・・・」
「なんですか?まさか・・・お茶も飲ませないくらい千鶴ちゃんに酷い扱いをさせているんですか?」
声を低くさせ、殺気を放つ。斎藤はハッとさせ鞘に手を掛けた。己の身の危険を感じた瞬間の無意識の癖なのだろう。
「・・・・・・あんた」
「お茶、斎藤さんが入れますか?それとも私がいれますか?」
これ以上の話は不要と悠真は言葉を遮り問いかけた。斎藤は黙り込む。考えているのだろう。
「茶はあんたが入れればいい。しかし、見張らせてもらう。」
「そうですか、お好きにどうぞ。」
斎藤と一緒に勝手場に向かう。終始無言のままお茶を用意して湯呑みに入れる。斎藤は言葉の通り監視をしている様で悠真の行動を見つめていた。その視線は勿論良いものではなく、これを毎日感じている千鶴にとっては凄く窮屈であり居心地が悪いはずだ。
胸に小さな苛立ちと不快感が湧き上がる。手際よくお茶を入れてお盆の上に湯呑みを乗せ千鶴の部屋へと戻るため勝手場を出ようとしたその時沖田と鉢合わせた。
「あれ、なんで監視されてる人間がウロウロ出歩いてるわけ?」
「お茶を入れさせていただいたんですよ。」
悠真は余計な事は言わず一言だけ告げて千鶴の部屋へ向かうべく沖田の横を通る。否、通り抜けようとした────
「っ!」
視界に銀色の光が目に入り即座に避けた。素早く後ろに退き刀を振るった本人である沖田を見る。
「おやおや、穏やかではないですねぇ」
「随分と余裕だね、今の状況本当に分かってないみたい」
「分かってないのはあなたの方では?そんな分かりやすい殺気振りまいて気づかないとでも?甘いですよ」
ふっ、と挑発するように笑えば沖田の視線が更に鋭くなった。険悪な雰囲気が辺りを包む。それを見ていた斎藤は小さく息を漏らして間に入った。
「総司、それくらいにしておけ」