第2章 if~貴方に忠誠を~
「・・・悠真くん?」
「思い出してくれました?」
悠真は嬉しそうに微笑み千鶴の頭に手を伸ばした。が、原田がその寸前で身を引く。遠ざかった距離に悠真は微かに眉を寄せ原田を見た。
「悪いが、お前の怪しさは拭いきれないもんでな。」
「新撰組の原田左之助さん・・・」
「お前は何者だ?」
「貴方に何故言う必要があるんですか?」
「こいつは今、俺たちが預かってるからだ。」
「預かる?拘束の間違いではないですか?」
「・・・!」
悠真の言葉に原田は一瞬目を見開き、視線をより鋭くさせた。
「お前・・・何を知ってる?」
「答える義務はありません。」
きっぱりと言い捨てるように告げ悠真はニコリと微笑む。だが、目は笑っておらず微かな殺気が滲んでいる。
「千鶴ちゃんをこうして新撰組に留まらせているのは恐らく、千鶴ちゃんの父親と夜中に徘徊する奇妙な連中が関わっているからでしょうかねぇ。」
「なっ・・・!」
愕然とする原田に悠真は悠然とした態度で目元を細め口元に笑みを作る。
「そこまで知ってるとはな・・・屯所に来てもらうしかねーよな。」
槍を構え、睨みつける原田。緊迫した空気に千鶴は一触即発な雰囲気に慌てる。
「初めからそのつもりですからご心配なく。」
「は・・・?」
あらかじめ予想していたような様子に原田は間の抜けた表情を浮かべ、千鶴も意味が理解出来ず困惑した。
「私の目的は千鶴ちゃんと共にある事です。千鶴ちゃんがいる場所なら私も側に。」
「つまり、だ。新撰組にやっかいになろうって事か?」
「はい、そういうことですね。」
つまりはこの男悠真は、わざと新撰組の内部情報をバラし己を危険視させ新撰組に自ら拘束されようとしているのだ。
────全ては千鶴のために。
拍子抜けした原田は溜息を漏らし、槍の構えを解く。
「まんまと罠に嵌った訳かい・・・」
こうなる事を分かった上での行動と言動。相手の思う壺だった事に
原田は眉を寄せ頭を掻いた。
「ったく、そこまで知ってて連れて行かねぇ訳にはいかないからな。あんたの思惑通り屯所に来てもらうぜ。」
釈然としないけどよ。そう苦々しく呟いて悠真を引き連れ屯所に帰る。