第6章 日常世界。
「あ、あぁ!追いかけるぞ!」
そう言って陽くんは走り始めた。
カラスさんは商店街の近くの古い神社へと入って行った。
しばらくみていると、賽銭箱にお金を入れ、
何かをお願いしているようだった。
そして、お願いが終わると境内のベンチに腰掛けた。
「…カラスさん…なのかな?」
私がそういうと陽くんは眉間にシワを寄せていた。
しばらくするとカラスさんが立ち上がった。
そして、何かを喋っていた。
「何か喋ってるね。一人で。」
「いや、なんか居るみたいだぞ?」
陽くんは指差した。
よく見るとその先には小さな猫が居た。
私はカラスさんの会話に耳をすませた。
「よう、チビ猫。お母さんどうした?迷子かぁ?」
カラスさんはしゃがみながら子猫に話しかけた。
「にゃー」
「…あぁ、一緒に食べるか?ジャムパン。」
そう言ってカラスさんはコンビニの袋からパンを取り出した。
「にゃー!」
猫は嬉しそうに鳴いていた。
カラスさんも嬉しそうに笑い、猫にパンをあげていた。
私は陽くんと顔を見合わせた。
「…なんかすごく良い人そうだね。」
私はポツリとそう言った。
「おう、見た目イカツイのにな。」
陽くんもうなずいた。
「別人かもね。」
「うーん…おっさんに聞くのが早いかなぁ…。」
そうして、私と陽くんは
優月さんのお店へと向かった。