第6章 日常世界。
行かないわけにも行かず
私は顔を洗い洋服を着替え玄関へ向かった。
「あら?こんな朝早くにどこいくの?」
お母さんが不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「んー。なんか、陽くんが…」
私は眠たい目をこすりながら
そう言い掛けてはっとなった。
「えぇ!?朝っぱらからデート!?んもぉ!若いっていいわねっ!行ってらっしゃい!」
「…はぁ。いってきます。」
お母さんは目をキラキラさせながら見送ってくれた。
私はよろよろーっと玄関を出ると
商店街の近くの公園へと向かった。
しばらく歩くと公園の入り口で座り込む陽くんを見つけた。
「…おはよう。」
「うわぁ!?ば、ばか!脅かすなよ!」
背後から話しかけたので
陽くんはびっくりしたようだった。
「カラスさんまだ居るの?」
「おう!ほら、ジャングルジムの上!あれアイツだよな?」
陽くんはジャングルジムの方を指差した。
ジャングルジムの上に座り煙草を吸いながらボケーっとしている男の人がいた。
真っ黒なツンツンとした短髪。
寝不足のように元気のない目に黄色い瞳。
耳にたくさんついたピアス。
…カラスさん…のようだけど
「カラスさんなの?」
「わかんねぇ!」
陽くんはくしゃっと笑った。
思わず溜息が出た。