第5章 カラス
「ちょっと待っててな。」
そう言って優月さんは店の裏の方へと消えた。
しばらくすると大きなバイクを押しながら優月さんが現れた。
「うわぁ!何か仮面ライダーのバイクみたいですね!」
「え?仮面ライダー?…それは褒めてるつもりか?」
優月さんは苦笑いしていた。
「は!はい!あれ?おかしいですか?」
私がワタワタしていると優月さんは笑った。
「ぶはっ。褒めてくれてありがと。ほら、これ被って」
優月さんはヘルメットを私に渡した。
「わぁ!ヘルメットって始めてかぶります!重いんですね!」
初めてのヘルメットはすごく重くて首が痛くなりそうだった。
「あぁ、フルフェイスだからな。よし、じゃぁ、乗れ!」
優月さんはバイクにまたがり、後ろを指差した。
「は、はい!」
私は言われるままに後ろにまたがってみた。
「よし、じゃぁ、俺の腰につかまって。」
「え!?…は、はい////」
優月さんの腰は思ったよりも細かったけど、
とってもしっかりしていた。
「あー!そんなつかまり方じゃ、落ちるぞ!ほら、こうやって…」
優月さんは私の腕を前に引き寄せた。
ほぼ抱きついている状態になって私はドキドキしてしまった。
「家までナビしてねー」
優月さんはそう言ってバイクのエンジンを入れた。
「は、はい!」
そして、バイクは動きはじめた。
初めて乗るバイクの後ろはすごく風が気持ちよかったけど
少しだけ怖かった。
ヘルメットの中のにおいか、
優月さんのにおいか…
ものすごく甘いコーヒーの匂いがした。