第5章 カラス
「まぁ、何せよだ。あいつには近づくなよ。」
優月さんはカウンターの片付けをしながらそう言った。
「…っちぇ」
陽くんは不満そうにしていた。
「おい、もう10時近くなってんぞ。ガキは早く帰れ。」
優月さんは時計を指差しながらいった。
「わぁ!?もう10時なんですか!?…早く帰らなきゃ!」
私はバタバタと立ち上がった。
「え?雛帰んの?」
陽くんはなんだか寂しそうな顔をしてこちらを見た。
「え?陽くんは帰らないの?」
「・・・。」
陽くんは眉間にシワを寄せ、何か考えるような顔をした。
「ほら、どっちも帰れよ。親が心配するぞ。」
優月さんは私と陽くんの頭を優しく撫でた。
「…は、はい///」
「俺、家帰っても誰もいねぇーし。」
陽くんは不満そうにしていた。
「…で?お前は帰りたくないのか?」
優月さんはうつむく陽くんの顔を覗き込んだ。
「だってぇ、する事ねぇんだもん。おっさんの家泊めてよ」
陽くんはぷぅっと頬を膨らませながら優月さんを見た。
「…はぁ、仕方ねぇなぁ。今日だけだからな。」
そう言って優月さんは陽くんの頭をポンポンと撫でた。
「え!?いいの!?やったぁ!おっさんマジサンキュー!」
陽くんはすごく嬉しそうな顔をしていた。
一人が寂しかったのかな?