第5章 カラス
優月さんのお店はバーに変わっているようだった。
陽くんは近くに自転車を止めて、
私たちはお店に入った。
「よう!おっさーん!」
「こ、こんばんわ!」
私達が入ると優月さんは溜息をついた。
「絶対来ると思った…。」
お店の中に他のお客さんは居らず、
静かなBGMに暗めな照明がとてもお洒落だった。
「あぁ!?なんだよぉー、その嫌そうな顔わぁー!」
陽くんは眉間にシワを寄せてカウンターに座った。
「あ、すいません。急に…」
私は少しオドオドしながら陽くんの隣に座った。
「あー、なんとなくわかってたからいいよ。何か飲むか?」
そう言いながら優月さんはメニュー表を渡してきた。
「あ!す、すいません。急いで出てきたのでお財布忘れました!」
しまった。
今朝のコーヒー代も払ってない。
私はメニュー表を優月さんに返そうと差し出した。
「いや、お金とかいいよ別に。高校生から金巻き上げるほど困ってねぇし」
そう言って優月さんはニコっと笑ってメニューを受け取らなかった。
「でも…」
やっぱり申し訳ないと思ったので躊躇していると陽くんがメニューを横から奪い取った。
「おっさんがいいって言ってるんだから、甘えようぜ。おっさん!俺、カルーアミルクねぇー♪」
陽くんは嬉しそうに優月さんに話しかけた。
「あぁ!?ガキに酒は出さねぇよ。ソフトドリンクから選べ」
「ぶー!おっさんのケチィ!じゃぁ…オレンジジュース!」
陽くんは不満そうにしていた。
「あ、わ、私もオレンジジュースで!」
「はーい。」
そう言って優月さんはカウンター内で作業をしはじめた。