第5章 カラス
振り返ると、そこにはお母さんが居た。
「ちょっとぉぉ!雛!彼氏!?彼氏なの!?」
お母さんはきらきらした目で陽くんを見ていた。
「い、いや、違うから!ただの友達…」
「きゃー!もう、イケメンじゃなぁい!はじめましてぇ、雛の母ですぅー!」
お母さんは聞く耳持たずな感じでキャーキャーと騒いでいた。
「あ、こんばんわ。光武陽です。」
意外にも礼儀正しく陽くんは頭を下げた。
「わぁー、ごめんね!陽くん!もう行こうっ!」
私は陽くんを引っ張った。
「雛!遅くなるならちゃんと連絡するのよ!ふふっ!」
お母さんは相変わらずなんだか嬉しそうにしていた。
「雛さんの事は僕に任せてください。お母さん。では、失礼します!」
そう言って陽くんは今まで見たことないぐらい爽やかな笑顔を見せた。
「きゃぁぁぁぁ!!!!任せたわぁぁぁ!!!!」
お母さんは芸能人に会ったかのように大興奮していた。
恥ずかしくてたまらなかった。
そうして、私達は外へ出た。
「もう、本当にごめんね。」
私がそう謝ると陽くんはニコっと笑った。
「お前の母ちゃんおもしれぇな!羨ましいわぁ」
陽くんは何だか少し寂しそうな顔をした。
「…?」
その表情が気になり、私は黙り込んでいると、
陽くんははっとなり、自転車にまたがった。
「ま、とりあえずほら、乗れよ。」
「えっと…私重いよ?」
「あ?大丈夫だって!俺をなめんな!」
言われるがままに私は自転車の後ろに座った。