第5章 カラス
建物の屋根の上に
座っている人影が目に入った。
その顔は満月による逆光で見る事ができなかった。
「久しぶりだな。黒雷さんよぉ。相変わらず鈍ってないねぇー」
そう言って
屋根の上に居た人物は屋根から飛び降りた。
高さ5Mはあるだろうか。
そんな距離から落ちたのに見事に着地をはたした。
「うわぁ。すごい。」
私はポツリと呟いた。
「バカ、関心してる場合か。もし何かあったら逃げるんだぞ。」
優月さんは剣を構えて言った。
「あ?俺達も一緒に戦った方がいいんじゃねぇのか?」
陽くんも杖を構えて言った。
「お前らじゃ次元が違うんだよ!あいつとは。瞬殺されるぞ。」
そう言って優月さんはこちらを睨みつけた。
"カラス"と呼ばれた人はこちらにゆっくりと近づいてきた。
漆黒の黒い髪、暗闇でギラギラと光る黄色い瞳。
そして、口元に浮かべた笑み。
ゾクっと背筋が寒くなった。
直感でわかった。
この人はヤバイ。
「よ、陽くん、優月さん、逃げましょう。」
私はそう言った。