第12章 現実世界。
思いついたように蘭丸さんは顔を上げると、
ボリボリと頭をかいた。
「…もしかしたら現実世界とゲーム内の記憶は共有していないのかもしれないな。」
「…ふむ。」
「俺はてっきり、中に樋渡光の人格が居るもんだと思っていたが…本当にゲーム内ではただの器なのかもしれない。」
蘭丸さんはコーヒーを飲み干した。
「そうなると、もし、現実世界の樋渡が奴らに保護されて生きていた…としても、以前の記憶等を消されていれば、俺らが助けに向かっても応じてくれない場合もあるってわけか。」
「…えーっと。」
私が頭を抱えていると
蘭丸さんはじっと空になったカップを見つめたまま呟くように行った。
「一番最悪のパターンの仮定だけどね。俺らが樋渡の場所を突き止めたとして保護しようとしても樋渡自身に拒否される。そして、最悪その場で消されるって事。」
…。
蘭丸さんって思ったより頭いいのかな?
私があの人から聞いた事を
話しただけでそこまで考えが行くんだ…。
「まぁ、もしかしたらゲーム内に樋渡の人格も居るかもしれないから仮定だからね!」
そう言って蘭丸さんは笑った。