第12章 現実世界。
思わずビクっと体がこわばって、
握られた手を振り払った。
「…あぁ。いきなり女の子の手を握るのは無礼だったね。すまない。」
樋渡光はそういうと、
頭を下げた。
「…あの、現実の世界に返してください。」
私がそういうと、
樋渡光は静かに笑った。
「悪いが今回は僕の意志で君を残したわけじゃない。なんで君がここに取り残されているか僕もわからない。勿論、僕は君を元の世界に返せる。でも、何故君がここに居るのか…僕はその理由を知りたいんだ。」
「…し、システムエラー?とか言う奴じゃないんですか?」
「僕の方にエラー報告は来ていない。だからシステムエラーではない。」
樋渡光は私に背を向けて暗闇の方へ歩きはじめた。
「え!?ちょ、ちょっと待ってください。」
私は一人で取り残されるんじゃないかという不安から
樋渡光の腕を掴んだ。
樋渡光は私の手を腕から離すと、
私の手を握りなおした。
「僕と少しだけ話しをしよう。そうしたら元の世界へ返してあげるよ。…おいで。」
私は樋渡光に連れられるまま
ゆっくりと歩き始めた。