第11章 アカシックレコード
「…怖くないわけないよ。」
私がそういうと、
陽くんはうつむいた。
「だよな。死ぬかもしんねぇもんな。」
「…うん。」
冷たい風が私達の間を通り抜けた。
「でも、もう後には戻れないし…陽くんや優月さんや蘭丸さんや律さんが居てくれれば大丈夫な気がする。」
私がそう言うと、
陽くんは顔をあげて驚いたような顔をした。
「…そう…だよな。一人じゃないもんな。」
陽くんは再び夜景の方に顔を向けた。
陽くんは深呼吸をし、
何やら気合を入れた。
「雛。俺はおっさんや蘭丸みたいに強くなくて…まだ弱いけど…絶対お前だけは守るよ!」
陽くんは少し顔を赤くしながらそう言った。
「…ありがと。」
嬉しくなって思わず笑うと、
陽くんは『ほら!もう帰ろう!』と言って
私の手を握って、
入り口の方へ引き返して行った。
自転車が坂を下っている時、
陽くんからは甘いチョコレートのようないい匂いがした。
陽くんの背中は少し大きくて、
男の子だって事を実感させられた。
そう思うと胸がドキドキしてしまって…
このドキドキが伝わってないか心配で
少しだけ、
遠慮がちに陽くんにつかまっていた。