第9章 狂った世界。
当然のごとくだが、
その日もあの世界へとばされた。
目をあけると、律さんと蘭丸さんが居た。
「おっ!雛ちゃーん!やっほ!」
律さんは笑顔で私の顔を見上げた。
「律さん…。」
こっちではこんなに元気な律さんが、
向こうでは寝たきりだなんて
信じられなかった。
「…ん?どした?」
律さんは私の表情に不思議そうしていた。
「い、いえ!今日はご指導よろしくお願いします!」
私はすぐに笑顔を作り、
頭を下げた。
「よっしゃ!じゃぁ…黒雷ちゃん達もこっち向かってるし…訓練所に行っとくか。」
そう言って蘭丸さんはドアを開けた。
「おっけー!」
律さんはでかい武器を引きずりながらドアの方へ向かった。
「あ、手伝います。」
私は武器を持ち上げようとした。
驚いた。
「あー、無理無理!女の子じゃ持てないよぉ!」
律さんはニヤっと笑った。
そう。
信じられないぐらい重かったのだ。
「まぁ、私にかかれば…えいっ!」
律さんは掛け声と共に思いっきり前のめりになった。
すかさず蘭丸さんが武器を支えた。
そうしないと、きっと律さんが潰れてしまうから。
「ほら~!持てたでしょ!」
律さんは前のめりになっているせいか、
後ろで蘭丸さんが支えているのに気付いていないようだった。
「あ…蘭丸さんが…」
私がそう言い掛けると、
蘭丸さんは人差し指を唇に当て、
"シー"っと言った。
それからずっと、
蘭丸さんは律さんの武器を後ろから持ってあげていた。
律さんは気付かず、
自分が持っているものだと思っているのか
力自慢をしていた。
その姿がとってもほほえましくて…
この世界の存在が
なんだか愛しく思えた。